2009年4月22日水曜日

崋山仁愛劇場 【琉球王国探訪】

『中山詩文集』
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『中山詩文集』

中山詩文集 -琉球王国伝承の漢詩文集
(当時の琉球国の偉大な詩人達のかけがえのない人類の遺産である。と私は思っている。)-
 
 沖縄の歴史は薩摩藩の琉球進攻によって大きく時代の流れが歪行した。薩摩の琉球入り後・1761年の察温の死がさらなる薩摩の支配力を増長した。一つの時代の区切りとなるこの時期は、琉球王国の歴史を語る
うえで切り離すことのできない重要な時代である。琉球における漢詩の歴史という狭義な分野ももちろんこの時代の大きな波を受けていてひとつの区切りであっただろうと私は考える。

 さておき漢詩の訓読法の普及によって琉球の漢学は著しい進歩を遂げて、にわかに高名な詩人が時代の荒波を乗り切って闊歩し一躍琉球人の存在は世界の注目を浴びる様になった。漢詩の分野だけで捉えてもいわゆる琉球の黄金期をと断言できるのではないだろうか。琉球漢詩の目覚しい隆盛期であった。

 そういうめざましい脚光を浴びた背景の中、もっとも注目された出版遺稿は琉球王国初の漢詩文集『中山詩文集』である。この漢詩集は、当時の琉球王国の高位な官吏であった程順則(当ブログ「六兪衍義」を参照)が琉球の進貢国の中国から渡来した帰化人の専住区である久米村の詩人(琉球帰化人では在るが元来中国語を生活語としていたので中国語の漢詩は当然長けたものがあった。)を中心にして編集したものである。編集者の程順則の詩がその大部分を構成したものであったのは編集者である程順則の琉球人(程家への養子であり父はもともと琉球人であり生粋の琉球人の心を育んでいたものと私は思う。生立ちゆえに純琉球人としての深い愛国心と郷土愛が形成されそれが本詩集の編纂に大きな影響を与えたことは容易に推理できる。私は彼の琉球への思い入れが作品に反映しているのだと考えて疑わない。人情的な分析でそう考えるに到った。)としての誇りがそうさせずには居られなかったのだと痛感する。
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 大半を占める程順則の詩はそのどれもが秀逸である。
これらの詩集の出版の後年、1705年に中国で『皇清詩選』が出ている。その中に琉球王国の詩人の作品が
およそ七〇首も収められている。その多くがこの程順則編纂の『中山詩文集』の中から紹介されたであろうと推察できる。なぜなら程順則は生涯5度におよび渡清していて琉球の詩集を中国側へたびたび紹介しているし他の琉球王朝の官吏たちに比してそのことに積極的たっただろうと推察できるからだ。あくまでも是は私の個人的な推理であって程順則が私にそう語っているわけではない。

 中国での『皇清詩選』の内容は、清国を中心にして周辺の朝貢国である朝鮮・安南・琉球などの詩人の作品が収められている。この時代にこれだけの多くの詩を集めて豪華な漢詩集を編纂できた中国の力量にあらためて驚かされる。さすがに中国5000年の歴史は只永いだけではないことに嘆息する。
 この詩集『皇清詩選』に程順則らの時代の寵児達(日本の監視の分野で。)の作品が収録されて現代に遺されていることはそのことだけでも感嘆に値するであろう。

 漢詩文集『中山詩文集』には
      
          『執圭堂詩草(しっけいそうしそう)』 曽益著

       『観光堂遊草(かんこうどうゆうそう)』 蔡鐸著

       『雪堂燕遊草(せつどうえんゆうそう)』 程順則著(雪堂が雅号)

       『翠雲楼詩戔(すいうんろうしせん)』 周新命著

       『寒窓紀事(かんそうきじ)』 蔡肇功著

       『四本堂詩文集(しほんどうしぶんしゅう)』 蔡文薄著

       『澹園詩文集(たんえんしぶんしゅう)』 蔡温著


などが収録されている。

 この時期は程順則ひとりの存在がひかり輝いて見えているが、それは彼が漢詩の世界に卓抜なる才を漲らせているからに他ならず五回におよび中国に行っていることや江戸上がりで琉球王に随行して日本の風土を肌で実感したことなどはこの『中山詩文集』にはまだ織り込まれてはいなかった。これらの後の作品に遺している。

 彼は中国からの帰国の時には自身の著作や中国の文献を版刻して持ちかえったり中国の書物を買いあさったり、友人や知人にまでもさえお土産として中国の書物を大量に持ち帰った。
 『十七史』・『皇清詩選』・『枕山楼課児詩話(ちんざんろうかじしわ)』(順則の中国福州での師・陳元輔の著)などは彼が持ち帰った著書の一部分である。、自著『指南広義』など私費を投じて福州で版刻し持ちかえった。なかでも『六兪衍義(りくゆえんぎ)』 は、日本各地の寺小屋(てらこや=下級の子供向け私塾)の教科書として用いられて日本人の心の下地を形成する原著となったと言いえるだろうと私は思う。
 
 そんな程順則の魅惑に溢れる漢詩の世界をこの『中山詩文集』は余すところなく伝えている。
 皆様も漢詩に親しまれてはいかがでしょうか?

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